まごころを磨く学問

「どうしてお礼をもらわねばならないんですか」



江戸時代初期の寛永19(1642)年、
飛脚の太郎が加賀藩前田家の公金200両を京都へ運ぶ途中、
琵琶湖南西岸の榎木の宿まで馬方の引く馬に乗りました。

宿について荷物をあらためてみると、200両がありません。

太郎は真っ青になりました。

自分の首が飛ぶ。

どこでなくしたのか、必死に考えているところに、
宿の主人が、「お客さん、さっきの馬方が来ていますが」と
声をかけてきました。


宿の玄関に出ると、先ほどの馬方の又左右衛門が
にこにこ笑いながら、包みを差し出したのです。

「これが鞍の間に挟まっていました。お忘れ物ですよ」

「仏の助けだ!」と、太郎は大きな安堵感を覚えました。

又左右衛門が差し出したのは、必死に探していた200両の包みでした。

その場で中身を調べると、全額そろっていました。

「よかったですね」とそのまま帰ろうとする又左右衛門を
太郎は呼びとめ、自分の財布から15両を出して
「お礼です。持っていっておくれ」と言いました。


ところが又左右衛門は、「あなたのお金をあなたに届けたのに、
どうしてお礼をもらわねばならないんですか」と言って
うけとりません。

10両、5両、3両、1両と金額を下げていきましたが、
又左右衛門は固辞して聞きません。



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